バーチャルとリアルをつなぐ、ものづくりの未来。「第十二回 SCSK Designers Forum」イベントレポート(前半)

2015年11月25日(水)、東京・秋葉原UDX GALLERYで「第十二回 SCSK Designers Forum」が開催されました。当日は、デザインやものづくりにかかわるデザイナーやエンジニアなど、さまざまな方が多数来場し、各種展示の体験や講演に参加していました。そのイベントの様子を、前半と後半の2回に分けてレポートします。


注目のデジタルデザインツールを紹介

SCSK Designers Forumは2つの内容で構成されています。1つがデザイン分野を中心とした業界のトップランナーによる講演。もう1つがデジタルデザインツールを提供する各社による最新ソフトやデバイスの展示紹介です。展示では、オートデスクの工業デザインツール「Alias 2016」やビジュアライゼーションツール「VRED 2016」などを実際に触って体験をすることができ、来場された方は担当者の話を聞きながら興味深く展示に見入っていました。



3Dプリンタとオープンソースによる電動義手の開発


最初の講演では、exiii株式会社の近藤玄大氏による、3Dプリンタとオープンソース化という新たな電動義手の開発についてのプレゼンテーションが行われました。

近藤氏は東京大学大学院工学系研究科修士課程を修了し、カリフォルニア大学バークレー校に留学。その後、ソニー株式会社に入社し、ロボット研究に携わっていました。そして、2014年10月に仲間とともにexiii株式会社を創業し、現在は代表取締役として今までにない電動義手の開発に取り組んでいます。


インダストリアルデザイナー小西氏、近藤氏、メカエンジニア山浦氏。

同社の開発する義手は、電動義手と呼ばれるもの。筋肉を動かす際に生じる微弱な電気や動きをセンサで読み取り、そのデータに基づいてモーターを制御することで、物をつかむ、手首を曲げるなど装着者の思ったとおりに各部を動かすことができる義手です。

この技術自体は以前からあるものでしたが、非常に高価(150万円以上)であったり、使用者ごとのカスタマイズが困難であったり、いかにも福祉器具であるといったデザイン性の低さなど、さまざまな問題がありました。同社では、この問題を3Dプリンタとオープンソースという最新のデジタルファブリケーション技術で解決したのです。


3Dプリンタで製作されているexiii株式会社の電動義手。

新しい開発手法と高いデザイン性により作りだされた今までにない義手

駆動機構の工夫により、部品の製造や組み立てにかかるコストを大幅に削減することが可能となりました。また、3Dプリンタで作られるパーツは色や形のカスタマイズが容易なため、一人ひとりの身体に合わせて製作する必要のある義手ではその特性が最大限に生かされています。

例えば、人の手の形をそのまま似せて作られる肌色一色の従来の義手とは異なり、同社の義手では色や形状など高いデザイン性を持って製作されています。まるで、ファッションやその日の気分に合わせてメガネやアクセサリーを変えるように、容易かつ安価に、機能や形状、デザインを選ぶことができるのです。

そして同社では、義手の製作にかかわるデータをオープンソース化し、誰でも閲覧したりダウンロードしたりできるようにしました。これにより、理論上はネット環境と3Dプリンタがあれば、世界中の誰もが義手を作り、開発にかかわることが可能となります。改良速度やバリエーションの多様化が飛躍的に高まることとなるのです。

「3Dプリンタとオープンソースによる開発のすごいところは、ローカライゼーションとカスタマイゼーションである」と近藤氏。3Dプリンタとオープンソースは、場所を選ばず、多様なバリエーションを世界規模で共有できる新しいタイプの開発手法なのです。


電動義手は脳から筋肉に送られる信号を読み取り駆動する。


3Dプリンタにより用途に合わせたパーツの変更も容易に可能。

3Dプリンタとオープンソースによる開発の今後の可能性

オープンソース化への反響は、1ヶ月経たないうちに国内外からあったそうです。例えば、イギリスの青年はどのように作るとうまくできるか紹介する動画を公開したり、さらに、右手のみ公開されていたデータを左手用に改良した人がいたりと、驚く速さで広がりを見せました。


オープンソース化により世界から多くの反応が集まる。

同社では、オープンソース化にあたって、各要素技術に関しては既に特許取得済みで、知財対策も行っているそうです。また、二次創作物を作る場合は使用の表示やオープンソース化することを義務付けるとともに、非営利利用に限らないことで開発速度を高め、ほかの技術も取り込みやすくしています。今後もさらなる発展が期待されます。

前半では近藤氏による3Dプリンタとオープンソースによる電動義手の開発についての講演をご紹介しました。後半では澄川伸一デザイン事務所代表の澄川氏によるデザインにおけるメタファー、暗喩の効果についての講演、株式会社本田技術研究所の三輪幸治氏による二輪開発における「みせる」デザインについての講演などについてレポートしていきます。

 

参考: