今、日本が注目すべき「インダストリー4.0」とは

ドイツといえば、高級車の代名詞であるメルセデスベンツやBMW、「空気感まで描写する」とまで称されたカメラレンズメーカーのカールツァイスなど、世界に名だたるものづくり大国です。その地位を不動のものとし、さらに飛躍するために、ドイツは今、「インダストリー4.0」プロジェクトに官民総力を挙げて取り組んでいます。

その内容は、同じくGDPにおける製造業の割合が多い日本においても、学ぶべきところがたくさんあります。インダストリー4.0について、あらためてその内容をおさらいしてみましょう。

ドイツにおけるインダストリー4.0への取り組み

インダストリー4.0は、2011年11月にドイツ政府により採択された国家戦略です。人類史上4度目の産業革命を起こすという壮大な目標を掲げ、“Internet of Things, Data and Services:モノ、データ、サービスのインターネット”を活用し、製造現場における劇的なコスト低減や、イノベーティブな新製品を開発することを狙っています。

インダストリー4.0を推進するために、ドイツ工学アカデミー(acatech)や自動車部品メーカーのボッシュ社、機械業界の連合会や工業連盟、ヒューレット・パッカード社、IBM社、シーメンス社など、そうそうたるメンバーが中心となって活動を続けています。

インダストリー4.0の目指す将来とは

では、インダストリー4.0は、具体的にどのような製造業の未来を描いているのでしょうか。例えば、工場のあらゆる場所にセンサーを設置し、機器同士が自律的にコミュニケーションを取るようにすれば、問題が検知された際は自動的に修復を試みたり、適切なタイミングでスタッフにアラートを送ったりすることができます。また、製造工程の自動化にも大きく寄与し、コスト低減につながると考えられます。

「自動化」はこれまでのような単純作業を機械に任せるだけでなく、よりスマートになった機械は、従来よりも複雑な操作を、人手を介さずに機械だけで実現するようになるでしょう。

例えば、製品のボトルに名前を彫るといったサービスは、従来大きなコストがかかるものでした。しかし、このようなスマートな工場であれば、製造の一工程においてちょっとしたデータの差し替えをするだけで実現できるのです。さらに、カスタマイズした商品を自動で流通段階までトラッキングすることで、機械のみで正しい配送先に届けることができます。

このように、インダストリー4.0はコストの低減はもちろんのこと、今まではできなかったような高付加価値のサービスを実現することができるようになるのです。

インダストリー4.0推進の背景と、日本の製造業との整合性

ドイツではなぜ、これほどまでの巨大な取り組みを進めているのでしょうか。ドイツにとって、GDPの26%を占める製造業は国家にとって大変重要な産業です。将来的にさらなる成長を目指すためには、停滞感のある欧州市場ではなく中国・アジア新興国市場を開拓する必要があります。しかし、ドイツ製品は人件費の高さから価格競争力が低く、中国・アジア新興国市場では厳しい戦いを強いられています。実際、2013年のドイツからの輸出先は、EUが57.0%に対し、中国が6.1%、日本は1.6%と、アジアの比率がいかに低いかが見てとれます。

日本・中国市場は、現地企業という強力なライバルがひしめき、ほかのアジア諸国においても中国・韓国のメーカーがしのぎを削る激戦区です。そこで勝ち残っていくために、ドイツはインダストリー4.0によりドイツの製造業全体の競争力を強化しようとしているのです。

翻って、日本における製造業とインダストリー4.0の取り組みはどのように関係するのでしょうか。日本もドイツ同様、GDPにおける製造業の割合が大きく、22%にのぼります。また、人件費も欧米に比べると低いものの、価格競争力向上は常なるテーマです。

アジア市場においては、日本の製品は地の利を生かして大きなプレゼンスを誇っていますが、このままでは4度目の産業革命を成し遂げたドイツに大きく水をあけられてしまう可能性もあります。日本の製造業にとっても、インダストリー4.0は注目すべきテーマといえるでしょう。

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