デジタルデザインツールにより変わるデザイン環境。デザイン部門だけで終わらない活用事例 (株式会社日南)

デジタルデザインツールの登場、機能の向上により近年大きく変わったデザイン環境。デザインの完成、モデルの製作、検討、再デザインというサイクルそのものが変化し、新たなデザインサイクルは従来では考えられないほど早く回っていきます。また、デザイン部門だけでなく、早い段階から様々な部門が同じ視点で製品の検討を行う事が可能となり、デザインを含めた製品の質の向上、トータルコストの削減など様々な効果を出しています。後半も株式会社日南クリエティブスタジオ、デザインディレクター猿渡氏に詳しく話を聞いていきます。

デザインからモデル製作をダイレクトに。加速するデザインサイクル

かつては手書きで、2Dで行われていたデザイン作業。今は3Dでのデジタルデザインが当たり前になりました。猿渡氏は「頭の中にあるモヤモヤとしたイメージを具現化しそれを人に伝えるまでには相当の表現力が必要であり、またスケッチ通りに立体化する事は簡単ではない。実際に出来上モデルをみると何か違うということはよくあった」と言います。平面に描かれたものは、物体の裏面など見えない部分が生まれるだけでなく、近似的に立体に見せる為に各部がデフォルメされる事が多くあります。3Dデジタルデザインツールならば、モニター上であらゆる角度から見て確認出来るのでリアリティを持って評価出来ます。隠れていた製品の問題点や可能性を発見する機会が増えるということ。より製品の価値を高めることとなるのです。
そして、3Dでのデジタルデザインは実物モデルの制作にも大きな影響を与えました。猿渡氏によると、かつてはデザインスケッチからモデルを製作するのには早くて2カ月ほどかかっていたそうです。それが今では3Dデジタルデータを作るのにエキスパートになれば2、3日。そこからダイレクトに3Dプリンタ等でモデルを作る事により、数日で実物形状のモデルが完成します。出来上がったものは3Dデータによりモニター上で既に多くの検討がされており、実物を見ての検討は最小限で行えます。作っては戻すという作業が非常に少なくなり、デザインサイクルが加速します。デザインから製作にかかる時間が短くなるということは、開発時間を短くすることが出来るという面と共に、その分デザインに時間をかける事が可能になるという面があります。猿渡氏は「仮に開発期間が短い製品であっても、より質の高いデザインを作る事ができるようになった。」と言います。



デザイン、開発、製造、営業。各部門の連携を生むデザインツール

3Dデジタルデザインツールにより、早い段階からリアリティを持って、直感的に製品を検討出来るようになると、デザイン部門以外にも様々な効果が生まれます。例えば開発や製造部門では、絵だけでは理解出来なかった各部を設計の立場から見ることが出来るようになります。これにより、デザイン段階から車体のプレス加工のシミュレーションや設計要件の検討などが可能となります。また、猿渡氏によれば、モデルが出来上がるまでリアルな検討が出来なかった車の内装の色や素材などビジュアライズソフトとの発達で早い段階からバ-チャルリアル(VR)な検討出来るようになったといいます。お互いに同じ視線で完成品の質を高めていけるようになるのです。他にも、営業部門であれば、早い段階で動きや色のあるリアリティを持った資料でお客様に製品の説明が可能となります。逆に、お客様からの要望をデザイン部門まで伝えやすくなります。絵ではよくわからなかったものが、3Dになることにより具体的な話を各部門間で行えるようになったのです。
このように、3Dデジタルデザインツールは各部の連携を高めるコミュニケーションツールとしての役割も担うようになってきました。開発の上流に位置するデザイン部門がイニシアチブをとり、3Dデジタルデザインツールによって相互にデータを共有していくことになるのです。デザイン部門の役割も今後大きく変わっていくことが予想されます。

まとめ

3Dデジタルデザインツールの登場はデザイン手法そのものを変え、デザインサイクルを従来よりも劇的に加速させました。これにより、様々な部門と連携を高めたより濃密なデザインが可能となったことが今回の猿渡氏の話からよくわかりました。猿渡氏は「日本では3Dデジタルデザインツールの活用がまだ足りない。今後はより多くの人がモノづくりに係れる活動を行い、様々な人や機関と技術をシェアしていきたい」と言います。今後より一層3Dでのデジタルデザインが進むことになります。猿渡氏の活動に期待します。